かつての楽園からの脱出
Escape from a former paradise
私は戦争中を生きていた。
新しい、現実に血の流れることのない形の戦争。
誰が誰を殺したか
誰が誰を追い詰めたのか
形として残らない
残虐で 狡猾で 冷たい 戦い
きっと、明るい未来は待っている。
でも。それがいつ来るのかはわからない。
私は幼い子供を育てていた。
いつか明るくなるとしても、子供の成長にとって一年、いや半年でも長い月日となる。
国外に出ることが禁止された、かつての楽園であるこの国。
民主主義の仮面を被って、正義の名の下に人権侵害を恥ずかしげもなく行うようになったこの国。
この先の見えない、強制収容所のような国から、未来ある子供たちとをつれて逃げるための準備を始めなければならない。
あと、慣れない外国暮らしを、いつも黙って支えてくれた、息子同然のワンコも連れて行かなくてはならない。
私一人でも大変なこの旅
幼い子供2人とワンコまで連れて、無事に海をわたることができるのであろうか。